青年劇場「あの夏の絵」北九州公演でのアフタートーク

青年劇場が、基町高校の原爆の絵の取組みを取材して制作された「あの夏の絵」(2015年初演)が学校公演を中心に全国ロングラン公演を続けています。この度、2022年10月19、20日に北九州で公演が行われました。地元の実行委員会による公演の企画で、原爆の絵の制作者に公演後のアフタートークを依頼されました。
卒業生2名が公演後に、実行委員会メンバーと共に舞台に上がり、劇を見た感想や、実際に原爆の絵を制作した時のエピソードなどについてお話ししました。
年末まで各地で公演が行われていますので、機会があればぜひ一度ご覧ください。

「こうやって、記憶って消えていくんかな」  曽根 沙也佳(そね さやか・創造表現18期生)

この台詞は、舞台「あの夏の絵」で主人公がぽつりと口に出した言葉です。
私が高校2年生(2017年)で原爆の絵の下絵を描いていた当時、学校公演の観劇中に初めてこの言葉を聞いて、原爆の絵を描き進めるための勇気をもらいました。
私が原爆の絵を描き始めた理由のひとつに、今、伝えられている記憶を絶やしたくない、という思いがあります。ですが私は「あの夏の絵」を観るまで、この思いをはっきりと自覚しないまま、言葉では言い表せない気持ちに突き動かされるままに絵に向かっていました。原爆の絵をめぐって葛藤する登場人物たちそれぞれの言動は、自分の形のない思いを代弁してくれているように感じられて、それまで自分が言語化できなかった多くのことに気づくことができ、その後の制作の大きな支えになりました。
先日、九州公演で5年ぶりに「あの夏の絵」を観させていただきました。常に必死だったあの日々が思い起こされると同時に、大人になった今だからこそ、周りの人たちの心強いサポートや温かい気持ちに包まれていたことに改めて気づかされ、かけがえのない体験をさせていただいたことへの感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。
そしてアフタートークでは、原爆の絵を描いていた時のことや、描いたことをきっかけに出会った人たちのことを思い出しながら、今までに感じたり考えたりしたことを精一杯話すことができたと思います。青年劇場や実行委員会、そして来場者のみなさん、真剣に話を聞いていただきありがとうございました。
原爆の絵を描き上げた今でも、私は舞台上の彼女たちのような思いで、これからも自分なりに記憶の継承に携わっていきたいと思います。
機会があればぜひ、観劇してみてください。原爆の絵を描いた人も、そうでない人も、きっとかけがえのないあの夏に触れることができるはずです。

青年劇場HP「あの夏の絵」

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